解体作業が始まった。「カボスの木を残してくれますか?」

解体作業が始まった。古家を取り壊し、ここに私達の家が建つ。更地にするとはこういう事だが、胸が熱くなった。

土地の契約をしたときのこと。「子供の頃はよく庭で遊んでいました。今は(随分昔ですが)結婚してこの近くで住んでいます。父が亡くなり、母を引き取って介護していましたが、一昨年母も。」不動産会社の応接室で、売主さんが私達に話してくれた。「お庭の奥にある木は何ですか?」奥さんがしんみり質問する。「カボスです。毎年、実がなってご近所さんに配っていたんですよ。」ご夫婦はおそらく60代半ば。解体すると分かっている家を毎日お掃除をしていた。調査している時に何度も顔を合わせていたが、その人とは知らなかった。「カボスのそばで見ましたよ。」「ギョッ」見られた。「じっと見られていたので、不思議だなぁと思って」実は、この立派な木も解体の時に無くなると思い、眺めていたことを話した。「何とかカボスを残せないでしょうか?

しばらくして、全て手続きを終え不動産会社の人(以後、住建D)が入ってきた。売主さんが「カボスを残してくれますか?」住建Dは「カボスって何ですか?」カボスを知らない。「庭の奥にある木ですよ。」住建Dはどれのことか分かっていない。「木のことは良く知らなくて、、、でも大丈夫です。業者に伝えます。」

売主さんの想い出を少しでも残せて良かった。更地にする心苦しさが少し楽になる。しかし、新しい家が建つ前に、想い出が詰まった家があったことを忘れてはならないと思った。

 

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