お皿の油汚れはまず、ティッシュから。「海の上ではなー、こうすんねん」

奥さんは三人姉妹。妹がいることはこのブログで触れたことがあったが、姉のことは書いていなかった。先日、義姉と会ったときのこと。「私のことも何かないのー?ブログ毎日、読んでるよ。書いてよー。」そう言われて思い出したことがある。

一人暮らしの義姉とは、時々一緒に食事をする。その義姉は、10年前に旦那さんを癌で亡くした。その旦那さん(義兄)のことについて少し。

「ヨットに乗せたげよか?」

義兄は親から受け継いだ、小さな不動産会社を経営する社長。かなり贅沢な暮らしをしていた。会うまではどうかなぁって思っていたが、会うとイメージが全然違った。とてもデリケートな人で、私のことを本当の弟のように付き合ってくれた。ある日、「ヨットに乗せたげよか?」突然の誘い。「嬉しい!乗ったことない。」二人はポルシェに乗って迎えに来た。「後ろ狭いから前に乗り」奥さんと義姉はメチャメチャ狭い後部座席に座った。「ゴメンなぁ。狭くて。今度は大きい車買うわ。」翌月、本当に買った。車に無学な私には分からなかったが、立派なワゴンの外車に買い替えていた。

義姉夫婦は、私が結婚した翌年に結婚した。義兄は既に40を超えていたので、二人暮らしを決めていたようだ。結婚して3年目、癌になった。「小さいうちに(癌を)取ってたら大丈夫や」といい、毎年のように手術を繰り返しながらも、よく旅行に出かけていた。仕事は不動産といっても賃貸業だったためか、余暇に費やす時間はたっぷりあったのだ。

ヨットのキャビンでレトルトカレー

「いつ死んでもええよーに、人生を謳歌したいねん。」ヨットのキャビンで、レトルトカレーを食べながら皆んなに話す義兄。「海の上はええやろー。陸から見る海はただの景色やけど、ヨットに乗ったら、全然違う。我々だけが生き残った地球人みたいやろ。」ボキャブラリーのセンスはイマイチだが、納得した。「ほんまや。最後のカレーかも知れんな。」義姉も負けじと似たような返事をして笑っている。

「海の上ではなー。こうすんねん。」

食べ終わったカレーのお皿を洗おうとすると、義兄が「ちょっと待って。海の上ではなー。」といいながら、私のお皿を取り上げ、テッシュで汚れを拭き取った。その後、ペットボトルの水をほんの少し垂らし、布巾で拭いた(洗剤は使わない)。「海の上ではなー。こうすんねん。」洗い物に水を使うのはもったいない。海の上では水は貴重品。そのことを説明してくれた。お皿の汚れはまず、ティッシュ。ということだ。

「海の上ではなー。」この言葉は義兄が亡くなった今でも思いだす。というか、その日以来、ずっと忘れない言葉になった。粗食生活の我が家でも、時にはカレーやパスタを食べる。そして、お皿を洗う時は必ず、"海の上ではなー" と声に出し、ティッシュで油の汚れを拭き取ってからにしている。

 

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